Unlock yourself. 自分を”アンロック”せよ

津波から奇跡的に生還した”禅僧”の「自分をアンロック」するブログ。

摩文仁の丘の惨めな旅人

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私が海外を放浪するきっかけになったのは

沖縄に行ったこと、でした。

 

The Boom島唄で、今まで知らなかった

「沖縄」というものに強く惹かれ

ご縁に導かれて沖縄を訪れた。

 

戦争と、平和。

 

考える機会はたくさんあるけれど

やはりそれは出会った「人」を通じて

私はその「人を思う」ことが

戦争と平和というものを

「言葉になる前の思い」によって

思うしかないのだ。

 

当時学生だった私は、沖縄戦のことも一通りにしか知らず

戦争、という自分の想像を超えた巨大な質量に

気が進まないというよりは怖気づいていたけれど

しかしどうも避けては通れない思いに押され

摩文仁の丘に向かった。

 

摩文仁の丘。

 

そこは

息をするのを忘れるほど

「美しい」という言葉ではなく

 

歓喜や感謝

開放や赦し

そいういうものを全て含んだ

Beautiful.

 

美しさ、そのもの。

 

そんな場所だった。

 

 

その摩文仁の丘の入り口で

二人のおばちゃんが

お供えする花を売っていた。

 

  お花買ってお供えしてあげてください…

 

観光地のお土産屋さんの前のように

私はなんとなく気が進まず

おばちゃんに勧められたその500円の花を断るために

  小銭ないから…

と言って通りすぎようとした。

 

  お金はいらないからお供えしていって

 

優しく、しかし毅然としたおばちゃんの声。

 

おばちゃんは手を伸ばし

その花を私に手渡そうとした。

 

私は驚いて立ち止まり

戸惑ったままおばちゃんの顔を見た。

おばちゃんの目は

私の戸惑いなどどうでもいいような

はっきりした意思を持った目、だった。

 

私は、体裁悪くその花を受け取った。

 

    お供えしてって、ね。

 

  …はい‥‥。

 

罪悪感と切なさとで

胸の奥が酸欠になりながら

楽園に迷い込んだ

場違いで惨めな旅人のように

摩文仁の丘を登った。

 

それ以降
いろいろな国で戦争の傷跡に触れる機会があった。

むしろ

それを何処かで義務のように感じていた。

 

どんな理由があろうとも

戦争があっていいはずがない。


私にそう思わせているものは

 

悲惨な戦争の記録や映像

学識者の論説などではなく

 

あの摩文仁の丘の圧倒的な美しさと静けさと

 

花売りのおばちゃんの

 

あの時の声。

 

人を変えるのは

人でしかない。

 

 

Unlock yourself.

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