「だって来てくださったんだもの。」佐藤初女さんの思い出。
Soft front, strong back.
10年以上も前になります。佐藤初女さんの出演する「地球交響曲第2番」の上映会を「世嬉の一酒造」さんを会場に何人かの有志で行いました。その上映会に初女さん本人にも来て頂き、交流させていただく機会を持つことが出来ました。
映像と全く変わらない、柔らかくしなやかな「背骨」を感じる方でした。そのころでも80歳を過ぎていましたが、「soft front, strong back」というある種のオーラがにじみ出ていました。
そろそろお止めになっても
映画の上映が終わり、30分ほどほんの販売とサイン会の時間をとっていたのですが、これが終わらない。主催者のひとりである私は、懇親会の準備を終え初女さんを迎えに行くとまだまだ長蛇の列。様子を見ると初女さんはひとりひとりに声をかけながら一文字一文字丁寧にサインしてくださっていました。
実は、初女さんは少し体調を崩していたのに無理を押して来てくださったそうなのです。
私は”主催者として”初女さんを気遣うつもりで「懇親会の時間ですし、疲れるといけませんからサイン会は途中でもお断りしましょう。」と声をかけました。
しかし初女さんの返事は、とても濁りなく透き通っていました。「だって来てくださったんだもの。せっかく映画も見てくださって本も買ってくださるんです。せめてこのぐらいはしないと。」私を少し気遣うように見上げそう言うと、また丁寧に丁寧にサインを続けました。
付き添いで一緒に来ていた初女さんの友人の女性が、声を出さず口だけを動かして私に耳打ちしてくれました。(いつもこうなんですよ)と。
「今を生きる」なんてただの言葉だ
私たちはわりと普通に「今を生きる」とか言ってしまうけれど、そんなものただの「言葉」でしかない。
初女さんのあのゆっくりとした筆使いは、そんな言葉では言い表せない「なにかほんとうのこと」でした。
この人は、「ほんとうの人生を生きている」「ほんとうに人生を生きている」「ほんとうに人生が生きている」色々書いてみたけれど、どれでもいいんだ。言葉なんだから。
でもあの時見た初女さんは、私の中の何かを震わせました。
今でもまだ、震えている。
私の中の何かを震わせたものは、なんなのだろう。
全ての生命よ、初音さんとともに安穏であれ
11.03.2016
Unlock yourself.
Unlock your life.